−聴覚障害児教育とその関連領域−

 

第52巻  第3号

2010年11月


 

研  究









事例報告







学会彙報


板橋安人
母音半母音の発音の重要性を考える
95-105

西山 健
児童虐待および体罰に関する大学生の意識調査−聴覚障害児に対する虐待の問題も含めて−

107-117

三反田多香子井賀誠子
中学校高等学校が連携した支援事例−地域に根ざした支援体制の取り組み−

119-130

 



ろう教育科学会編集

ISSN 0287-1548

 


 


母音半母音の発音の重要性を考える
A Practical Consideration on Whether to Teach the Correct Pronunciation of Vowels Semivowels to Children
with Hearing Impairments Should Have a Major Role in Japanese Articulation Intelligibility.


板橋安人 Yasuto Itabashi


聴覚障害児において母音・半母音の発音の正しさと発話明瞭度との関係を経年的に追って検討した。その結果、母音・半母音が正しく発音できない群は小学部6年間を通して発話明瞭度が停滞すること、母音・半母音が正しく発音できる群は小学部6年間を通して発話明瞭度が向上すること、また正しく発音できる母音・半母音の数が増加した群では小学部6年間を通して発話明瞭度が向上することが示された。ここから、聴覚障害児の発音・発語学習において母音・半母音が正しく発音できる技能を高める指導を行うことが重要であることを指摘した。

キーワード: 母音
半母音,聴覚障害児,発音発語学習

  

児童虐待および体罰に関する大学生の意識調査−聴覚障害児に対する虐待の問題も含めて−
A Basic Study on the Awareness and the Attitudes of University Students toward Child Abuse, Including
the Issues of Deaf Child Abuse.


西山 健
Takeshi Nishiyama

児童虐待への対応および予防は現代日本における喫緊の課題であり、児童虐待の防止等に関する法律のなかにあるように、その取り組みにおいて学校の果たす役割は大きい。障害のある子どもの場合、虐待を受けるリスクがより高くなるという数多くの指摘からすると、特別支援諸学校ならびに特別支援学級の果たす役割はとりわけ重要であると考えられる。しかし、学校も体罰という子どもに対する暴力の問題を孕んでいる。本研究では、児童虐待や体罰に対するボトムアップ・アプローチの端緒として、大学生を対象とした質問紙調査を実施した。本稿ではその単純集計結果を報告し、内容を検討する。

キーワード: 児童虐待,体罰,大学生の意識,聴覚障害,虐待リスク

  

中学校高等学校が連携した支援事例−地域に根ざした支援体制の取り組み−
A Consideration on the Present State of Learning Support Systems for the Deaf Students in a Small University.

三反田多香子井賀誠子 
Takako Santanda & Seiko Iga

和歌山県において、聴覚障害児者へこれまでろう学校が行ってきた相談・支援の現状から、福祉との連携事業(障害児者地域療育等支援事業)への参画によって構築されてきた地域での支援体制について考える。地域で継続して支援を行ってきた結果、小学校、中学校、高等学校への一貫しての移行支援が可能となった。その結果、継続支援によって培われたネットワークにより実現した高等学校支援という本事例をとおして、支援の進め方や具体的内容の成果と課題を検討する。また、支援を受けた高等学校が行った実践についても具体的に報告し、考察する。今後に向けて、和歌山県全体を地域ごとに支援する体制として新たに始まった支援学校と連携した聴覚支援体制の取り組みについても紹介する。

キーワード: 高等学校支援,支援事業,福祉との連携,地域での支援体制



 

目録へ戻る