−聴覚障害児教育とその関連領域−

 

第45巻  第4号

2004年1月


 

特集:ろう教育科学会第45回大会

  シンポジウム

司会:石原佳敏 提案:川井 柳生
ろう教育科学45年をふりかえり聴覚障害教育を展望する 221-234

  記念講演

藤本裕人
「今後の特別支援教育の在り方(最終報告)」と聴覚障害教育について 235-244

  講  演

平野久美子
こども学をめぐって 245-253

研  究

中村好則黒木伸明
聴覚障害生徒に対する作図活動による論理的思考能力の育成に関する研究−多様な見方・考え方を引き出す教材の活用と作図操作の文章化− 255-271

我妻敏博
聾学校における手話の使用状況に関する研究(2) 273-285


学会彙報
 254

 



ろう教育科学会編集

ISSN 0287-1548

 


 


聴覚障害生徒に対する作図活動による論理的思考能力の育成に関する研究−多様な見方考え方を引き出す教材の活用と作図操作の文章化−
Research on the Development of Logical Thinking by Geometric Construction to Hearing-Impaired Students
中村好則黒木伸明 Yoshinori Nakamura and Nobuaki Kuroki

 本研究では、聴覚障害生徒の多様な見方・考え方を引き出す方略を「直線m上にない点Pを通り、直線mに平行な直線を引く」という作図問題を例に考察し、聴覚障害生徒の論理的思考能力を育成するための指導への示唆を得る。そのために、この「平行線の作図」問題の教材化を検討するとともに、作図操作の文章化とスモールステップの設定を指導の手だてとし、聾学校専攻科において指導実践を行い授業を分析した。その結果、平行線を引くという一見容易に見える課題を多様に解決することで、聴覚障害生徒の多様な見方・考え方を引き出すことができるとともに、今まで学習してきたことを体系的に関連付けることに有効であるとの知見が得られた。また、聴覚障害生徒の論理的思考能力の育成には、多様な見方・考え方を引き出す教材の活用と数学的操作の文章化が有効な指導の手だてとなるという示唆を得た。

キーワード:多様な見方考え方,論理的思考能力,平行線の作図,操作の文章化

 

聾学校における手話の使用状況に関する研究(2)
The Use of Sign Language in Schools for the Deaf (2)
我妻敏博 Toshihiro Agatsuma

 我が国の聾学校で手話がどの程度導入されているのか、また、最近の5年間でその割合がどのように変化したのかを明らかにする目的で平成9年と14年にアンケート調査を実施し、その結果を比較した。同時に手話導入による改善点と課題を調べた。調査の結果、以下のことがわかった。①程度の違いはあれ、手話を取り入れている聾学校の割合が急激に増加し、平成14年で7割以上に達した。②手話導入によってコミュニケーションがスムーズになった。③しかし、子どもの音声に対する意識が薄れたことや教師に対する手話研修の充実などが課題として挙げられた。

キーワード:聾学校,手話,聴覚口話法,アンケート調査

 


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