聴覚障害生徒の認知と論理−4種の命題の真偽判断や図形認知の問題などを通して−
A Study on Recognition Development in Deaf
Students through the Tests Relating to Four Logical Inference Forms,Geometrical Figure,and
so on
脇中起余子 Kiyoko Wakinaka
人工内耳装用児一事例における聴覚学習効果
Effectiveness of Auditory Learning for
a Profoundly Deaf Child with Cochlear Implant
国末和也・川崎聡大 Kazuya Kunisue and Akihiro Kawasaki
日本手話・中間型手話・日本語対応手話の構造の違いについて
On the Difference among Japanese Sign
Language,Pidgin Sign Japanese,and Manually Coded Japanese
長南浩人 Hirohito Chonan
本研究は、日本手話、中間型手話、日本語対応手話の構造的な特徴を明らかにすることを目的として、まんがの伝達課題を用い、それぞれの手話表現を収集し分析した。その結果、以下の6点について違いを明らかにすることができた。(1)日本手話の表現で変化動詞が用いられる場合、動詞の運動の一致という表現が見られた。中間型手話や日本語対応手話では動詞の運動の一致は見られなかった。(2)日本手話で無変化動詞が用いられる場合、動詞の後に指差しが見られた。中間型手話や日本語対応手話では無変化動詞の後の指差しはなかった。(3)日本手話で複文が用いられる場合、修飾句は名詞の後ろに表現され、句と被修飾語の間に小さなうなずきと、それに続くポーズといった手話の文法マーカーが見られた。中間型手話や日本語対応手話では、修飾句は名詞の前に表現され、また被修飾語との間に小さなうなずきは見られなかった。(4)日本手話は、うなずき、ポーズなど手話の文法マーカーが観察された。(5)日本手話では、表情が頻繁に変化した。(6)付帯状況は、日本手話では重層的な表現を利用して表現されていた。中間型手話と日本語対応手話では、「ながら」という日本語を利用して表現し、日本手話のように2つの動作を同時に行うことはなかった。
キーワード:日本手話,中間型手話,日本語対応手話,文法構造
聴覚障害学生の障害認識に関する研究
Study on the Recognition of
Deafness in Students with Hearing Impairments
相良啓子・斎藤佐和・根本匡文 Keiko Sagara,Sawa Saito and Masafumi Nemoto
我が国唯一の聴覚障害学生のための高等教育機関(筑波技術短期大学・聴覚部)に在籍する51名を対象に、1、3年次にアンケート調査を実施し、彼らの障害認識の変化について分析した。また、51名中20名には個別の面接調査を実施し、現在の障害認識の実態や在学中の変化を各事例の生育史やコミュニケーション経験と関係づけながら検討した。アンケート調査では、全体的な傾向として、在学中に聴覚障害者としての生き方を肯定する方向での変化が多かったことがわかった。面接調査から、聴覚障害のある自分の捉え方として、「ろう」としての積極的肯定や「ろう」「難聴」の中間的存在としての認識など6グループに分類することができた。しかし、聴覚障害学生の一人ひとりの認識は、彼らを取りまく過去あるいは現在の多様なコミュニケーション環境を通して生じており、一定の傾向はあるものの現実にはかなり個別的な様相を呈していることが明らかになった。