−聴覚障害児教育とその関連領域−

 

第43巻  第2号

2001年7月



研  究

太田康子加藤靖佳
聾学校小学部における音楽教育について−音楽指導に関するアンケート調査をもとに− 

田中英之
聴覚障害児の音読と発音明瞭度の関係 

報  告

21世紀の特殊教育の在り方について(最終報告)

学会彙報

 



ろう教育科学会編集

ISSN 0287-1548

 


正誤表
p.71 9行(要約部分)
さらに検計をさらに検討を


聾学校小学部における音楽教育について−音楽指導に関するアンケート調査をもとに−
Musical Education at Elementary School Department for the Deaf
太田康子加藤靖佳 Yasuko Ota and Yasuyoshi Kato

 本研究では、全国の聾学校小学部の音楽科を担当している教師にアンケート調査を行い、聾学校における音楽教育の現状及び今後の課題について検討した。調査は郵送法で、回収率は70%であった。調査結果より、聾学校用の音楽の教科書をメインに使用している学校は32%であった。その他の学校では、普通校用の教科書や自作の教材などが取り入れられていた。音楽の広い領域を指導するにあたって、十分な教材が用意されていないことが示唆された。聾学校での音楽指導において困難に感じていることについては、大きさ、旋律、リズムなどの音楽的要素を、児童が理解、表現することが難しいといった、児童の聴覚障害に関わる回答が多く得られた。それとともに、児童にどのようにきこえているのか、その指導法についての疑問を教師自身が抱いていることがわかった。また、音楽科では、他の教科との連携した指導が望まれており、実際に、他教科や養護・訓練と連携して指導に取り組んでいる学校もみられた。聾学校での音楽指導において、他教科との連携した指導は、今後も注目すべき点であると思われた。

キーワード:聾学校小学部,音楽教育,アンケート調査

 


聴覚障害児の音読と発音明瞭度の関係
Relations between Reading and Articulation Intelligibility in Children with Hearing Impairment
田中英之 Hideyuki Tanaka

 本研究では、聾学校に在籍する発音明瞭度の異なる聴覚障害児2名に対し、音読時の音声を音響的に分析し、音響音声的特徴について検討した。また、健聴児の音読との比較検討も行った。その結果、(1)音読において、聴覚障害児は健聴児に比べ、持続時間の延長が認められ、音読速度が低下し、音読速度が長くなった。聴覚障害児の中でも発音明瞭度が高い場合は、低い場合に比べて、健聴児により近い値を示した。(2)音読において、聴覚障害児は健聴児に比べ、明らかに多くのポーズを取ることが分かった。
 本結果から、聴覚障害児の音読は、発音明瞭度など構音の問題に影響されることが分かった。今後、音読における発声の生理的な側面と言語的な側面の関連も含めて、さらに検討を深める必要がある。また、日本語の読み書きを指導していく一つの方法として聴覚障害児の音読についてさらに理論的裏付けのある実証的研究が必要と言える。

キーワード:聴覚障害児,音読,発音明瞭度,音響分析,ポーズ

 


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