第42巻 第2号2000年7月


聾学校高等部生徒の発話の明瞭性、発音技能、及び発音意識
Speech Intelligibility Articulation Skills, and Self-Consciousness of Speech Production in High-School Deaf Students
板橋安人
Yasuto Itabashi

 本研究では、聾学校高等部に在籍する生徒27名に発話の明瞭性の評価、単音節発話明瞭度検査、及び発音意識に関する調査を行った。その結果、発話の明瞭性が高い生徒は単音節発話明瞭度で約60%に相当すること、大多数の生徒が発音が上手になりたいと願っており、発音練習の必要性を感じていること、また校内進学者については以前の資料の検討により高等部生徒が小・中学部時代に発音技能を向上させていたことが明らかになった。ここから、学習者のニーズに応じた高等部段階の「発音・発語」学習の観点を考察した。

 

聾学校高等部生徒の関数の理解について
Comprehension of Functions by Deaf Students: A Study at the High School Department of School for the Deaf
大竹一成
Kazunari Ohtake

 現行の高等学校学習指導要領に基づき、F聾学校高等部でも、普通科1年生に数学Ⅰを4単位履修させているが、数学Ⅰの中で指導者側も生徒もいちばん苦労するのは「二次関数」である。四日市(1991)は、聾学校の数学の授業において、一次関数については、多くの要素が変化するものはとらえどころがなく、全体のイメージをもちにくいようであると述べているが、数学Ⅰにおける二次関数については、変化する要素が一次関数よりも増加し、かつ複雑化するため、一層理解が難しくなっていると考えられる。本研究では、数学の授業で、関数に関連する内容を扱うにあたって、課題となることを明確にしたいと考え、「関数の理解度調査」を実施した。その結果の中で、正答率60%未満の内容について生徒の答案を分析したところ、重点的に扱う必要があるものとして、「(1)関数の意味」「(2)変域(「<」と「≦」の意味の違い、変域の意味、変域の表し方)」「(3)関数のグラフや式からxの値に対するyの値の変化を読む」「(4)表の意味を正確に読む」「(5)計算力」「(6)一次関数における変化の割合と直線の傾きとの関係」の6項目にまとめられた。

 


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