第41巻 第3号1999年10月


教育相談センターにおける聴能サービスの実践−難聴児童・生徒のための教育相談の試み−
A Practice of Auditory Service in Educational Coordinate Center
上農 肇
Hajime Ueno

 教育相談業務の一環として、難聴児童・生徒本人とその保護者及び在籍する学校に対して聴能に関わる相談活動(以下、聴能サービスとする)を行った。
 相談申し込みの多くは児童とその保護者からであり、対象児童・生徒の半数以上が通常学級のみで学んでいた。相談方法ではカウンセリングが必要となる相談の要請は少なく、ガイダンスや本人への直接の聴覚活用援助が求められることが多かった。また、学校へのコンサルテーションの依頼を含めたFM補聴器の貸出に伴う相談も複数あり、聴能サービスを継続する必要性が認められたが、更に潜在的な相談ニーズの掘り起こしと関連機関との連携の必要性があるものと考えられた。


聴覚障害生徒にとっての内包量と比例関係の理解に関する一考察−速度に関する問題を中心に−
A Study on the Understanding of "Connotation" and "Proportion" for the Deaf Students through the Tests Relating to Speed
脇中起余子
Kiyoko Wakinaka


 速さ・距離・時間の関係について、同じ速さの時、距離と時間は比例関係にある。また、速さは距離と時間という外延量の商で表される内包量である。藤村(1997)は、比例関係は内包量理解に、また定性推理(大小関係の判断)は定量推理(計算)に先行することを指摘しているが、聴障生徒の場合、そのような傾向を見出すことはできなかった。むしろ、定量推理の問題で算出された答と与えられた数の大小関係と、定性推理の問題における大小関係の判断が一致しない例がかなり見出された。全体的には、「短時間かつ短距離=速い」とするようであったが、次第に「等時間の時は長距離走った方が速い」ことが理解されるようであった。その他、いろいろな問題を実施したが、「3−5=( )」や「2÷10=( )」に対して、負の数や小数・分数の存在を認識していると思われるCグループでは、全体的に聴児の小5〜6に匹敵するかそれ以上の結果を示したのに対し、負の数や小数・分数の存在を認識していないと思われるA・Bグループでは、全体的に小4と同じかそれ以下の結果を示した。後者のグループの生徒に対する指導方法については、今後の課題であろう。

 


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